行動特性分類におけるDISC理論。それはどのようなものでしょうか?DISC理論により分類される4類型はどのよう特徴があるのでしょうか?今回も、4人の部下を持つ岬課長(みさき かちょう)と上司の千部長(せん ぶちょう)のやりとりを見てみましょう。
行動特性 DISC理論とは?
千部長、いま少しお時間を頂いてよろしいですか?行動特性を調べているとDISCという言葉が出てきたんですけど、アメリカの理論らしくてなかなかとっつきにくくて…
ウィリアム・モールトン・マーストン博士の提唱した行動特性の分類モデルだね。
すごい人なんですか?
いろんな意味で凄い人だよ。世界で最初の嘘発見機を発明した人でもあり、度々実写版が映画化されているアメリカンコミック『ワンダーウーマン』の生みの親でもあるんだよ。
昨年「ワンダーウーマン1984」が公開されていましたけど。あの映画の原作の作家さんですか?
キャラクターデザインというところかな。法律を学んでから心理学で博士号をとった学者さんなんだけど。多才な人だね。
ワンダーウーマンは相当古くから続く長寿漫画ですよね。ということは、DISCもかなり歴史のあるモデルなんですか?
マーストン博士は1928年に出版した『Emotions of Normal People』という本の中でDISCの分類モデルの初期の形を示している。
そんな昔ですか?
パーソナリティタイプを黄、緑、青、赤の4色に色分けして、ふるまいをD(ominance)型、I(nducement」型、S(ubmission)型、C(ompliance)型に分類する手法は今のDISCの分析手法に受け継がれているようだね。もっとも、現在利用されている単語は微妙に違うようだけど。
私が見たのは、IはInfluence型、SはSteadiness型、CはConscientiousness型またはCorrectness型に分類していました。他にもIはInteractive型、SはSupportive型にしているところもありました。もう何が何だかわからないです。
日本ではD型は「主導」、I型は「感化」、S型は「安定」、C型は「慎重」と訳されていることが多いようだね。
DISC理論による行動特性の分類
なんで、こんなにバラつきがあるんでしょう?
実はDISCモデルは発表時にはそれほど反響はなかったんだ。また、マーストン博士は、分類のためのアセスメントの方法には言及していないんだ。
えっ、そうなんですか?
そう。だからDISCモデルが社会で使われるようになるのはアセスメントの方法が登場する1950年代からだ。産業心理学者のウォルター・クラークという人がチェックリストによるセルフアセスメントの手法を取り入れたことで、アメリカで会社の採用テストなどで徐々に使われるようになったんだ。
そうなんですね!
その後チェックリストから、最も当てはまるもの、最も当てはまらないものを複数選択する方法へ改良されたりして、広く使われるようになっていった。
DISCの4タイプを意味する単語が複数あるのは、アセスメントの方法を考えた人たちがそれぞれより適切なものに変えたからですか?
そうだね。もともとマーストン博士が提唱したDISCモデルは、直訳するとD:支配型、I:誘導型、S:服従型、C:遵守型という余りイメージのよくない単語を使っていたからね。DISCのアセスメントを前向きな形で広めていくためには、イメージチェンジが必要だったんだろうね。
DISCモデルの4類型を簡単に教えてもらえますか?
僕はだいたいこんな感じで理解しているよ。
DISC理論―D型
D型は、4つのDISCモデルの中で最も自己主張が強く、要求の多いタイプで、競争が好きで結果を重視する傾向がある。D型は他の人から見ると、攻撃的で、無愛想で、失礼な人だと思われがち。D型は、プレッシャーを感じると、物事を成し遂げることにさらに集中するため、他人への配慮に欠けていると思われてしまう。
D型は積極的にタスクに集中できるため、権限を欲する。 D型は、変化やチャレンジを好み、リスクを厭わず、即座に成果を出したいので即決即断。自分のやり方に拘り、せっかちで威圧的なところがある。聞き上手ではないが、大局的な視点とマルチタスクには優れている。謙虚さに欠けるため、他の人からは傲慢だと思われてしまうこともある。
DISC理論―I型
I型は、外向的で、社交的で、おしゃべり。楽観的で、注目を浴びたいと思っており、他人との交流を好む。細かいことに集中したり、一人で長い時間を過ごすのは苦手。I型は、人に影響を与えたり、リーダーとして人を従わせるのが得意。自分が何をしたいのかを理解し、それを実現するために人々をまとめることができる。
I型は、社会的な承認欲求が強く、人から好かれることを好む。自発的で衝動的なところがある。 I型は、しゃべりすぎで、集中力に欠け、感情的なところがあり、楽観的で人に好かれたいため、約束をしすぎることがある。I型は、非常にフレンドリーで、エネルギッシュで、活発であると見られる。他の人はI型はやや無頓着で無秩序だと感じるかもしれない。また、プレッシャーがかかると、人にばかり気を取られて、細部やタスクを見落としてしまう傾向がある。
DISC理論―S型
S型は、安定していて、穏やかで、気楽な性格。控えめなので、知らない人との交流を好まない。S型は、安定と安心が好きなので、物事の変化を好まない。家族や友人を非常に重要視し、自分のグループやチームを、時には感情的になるほど強く守る傾向がある。S型は、公正さと正義を重んじる。
S型は信頼でき、安定している。タスクを遂行するために、特に担当者との協力を重視するため、S型は、何を、いつ、どのようにしてほしいかを伝えれば、喜んでそれを実行してくれる。S型は失敗を恐れるため、詳細を十分に伝えないと、業務に着手しない場合がある。S型は、行動や意思決定の際に躊躇しやすい。相手のことを考え、合意を重視したいと考える傾向にある。 S型は、プレッシャーを感じると、融通が利かなくなることがある。S型はよくすぐに「はい」と言ってしまう。S型が最も恐れるのは、安定性の喪失。S型は、安定した安全な環境を望んでおり、変化を好まない。
DISC理論―C型
C型は、4つのDISCモデルの中で、最も分析的で控えめなタイプ。非常に細部にこだわり、事実、情報、証拠に注目することを好む。また、一人で仕事をすることに慣れている。C型は慎重で、自分自身に高い基準を課し、タスクを分析し、製品やサービスの質を重視する。
C型は、間違いを見つけることに集中し、誰もが自分の基準に従うことを期待するため、他人に対して批判的な印象を与えることがある。他の人は、C型の細部へのこだわりや正確さを、細かいことにこだわる人だと感じることがある。C型は、物事を正確に行いたいと思うあまり、問題を分析しすぎて、多くの情報を必要とし、意思決定が遅くなることがある。プレッシャーがかかると、過度に批判的な印象を与えてしまうこともある。
まとめ
ありがとうございます。わかりやすいですね。
ただ、現在のDISCモデルは、この4類型のうち2つもしくは3つの組み合わせもあるそうで、より細かい分類が行われているようだ。
DISCのIが小文字になったDiSCという表記もよく見かけるのですが、何が違うのでしょうか?
DiSC®は米国John Wiley & Sons社の商標で、他のDISCモデルのソリューションと区別するためにIを小文字にした商標を作ったそうだ。日本ではHRD 株式会社が認定パートナーとして各種セミナー等を開催しているよ。
この前仰っていたLISACO®のモデル分類についても伺えます?
おっと、もうこんな時間だ。今日は夕飯を作る約束しているんだよ。
それは失礼しました。また今度お願いします。今日は何をつくられるんですか?
山梨の知人が送ってくれた稚鮎を天ぷらにしようと思っている。日本酒に合いそうじゃない?LISACO®については今度ゆっくり話すよ。
職場帰りにお酒が飲めた時代が懐かしいですね。
いつかそんな日々が戻ることを願って、早く帰るか。
千部長と岬課長のマネジメント日記 つづく
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