「行動特性」とは何でしょう。人事関連用語として、最近わりと耳にする言葉ですが、アプローチの方向によって様々な捉え方があり、なかなか理解が難しい概念でもあります。「行動特性」とコンピテンシーや性格診断との関係は?仕事をするうえでどのように活用できるのでしょうか?一見簡単なようで、なかなか奥の深い「行動特性」について解説をしていきます。
行動特性とは?コンピテンシーとの関係
現状、「行動特性」は、コンピテンシーの同義語と説明されるケースが多いようです。語源である英語のcompetencyは、広い意味での行動特性ではなく、ハイパフォーマー(業務遂行能力が高く、仕事で安定して成果を出し続ける人材)の行動特性という限られた意味を持ちます。
コンピテンシーという概念のもと、企業は、社内の各業務におけるハイパフォーマーの仕事の進め方や考え方を分析・把握し、それをモデルとして人事制度上の評価指標に導入することで、組織全体の能力強化や生産性の向上を図るようになりました。
日本企業が「コンピテンシー」という理念を導入する際に、行動特性を訳語として当てたことが、今日、行動特性がコンピテンシーと同一視されている原因だと思われます。
従って、コンピテンシーは狭義の行動特性とみなすことができます。一方で、本来(広義)の行動特性は、個人一人ひとりの考え方や習慣に基づく行動の特徴の分類であり、対象がハイパフォーマーに限定されるものではありません。
これから、個人一人ひとりに着目した本来の意味での行動特性の活用が広まれば、行動特性=コンピテンシーという現在の理解も変わっていくのではないでしょうか。
行動特性とは?性格診断との関係
就職活動の際に、適性検査(性格診断)を受験された方は多いのではないでしょうか。日本では、SPIが良く知られています。
適性検査(性格診断)は、日本企業において、受験者の行動・思考の傾向や情緒の安定性を診断し、社風に合った人材かどうかを判断する材料として利用されているようです。さらに、能力テストと組み合わせて、入社後の配属先を決める際の判断材料として利用されるケースも増えているようです。
ただ、適性検査(性格診断)は、入社前には広く利用されている検査ですが、入社後に定期的に適性検査(性格診断)を受けるという話はあまり聞きません。現時点では、能力はあっても入社されると問題がありそうな(集団に馴染めない、社風に合わないといった)方をフィルターリングする役割がフォーカスされており、入社後の人材育成においては充分な活用はされていないようです。
社内での職歴が長くなれば、それに伴いパフォーマンス評価等の人事データも蓄積されていきます。企業は蓄積されたこれらの人事データを活用するようになり、入社時の適性検査(性格診断)のデータは徐々に意味を持たないものになっていくからなのでしょう。
行動特性は、個々人がこれまで生きてきた環境の影響が大きく、構成要素として性格も含まれます。また、職種や業務への適性についても行動特性による診断が可能なものもあります。そういった意味では、行動特性の診断は適性検査(性格診断)と重なり合うところがあると言えます。
行動特性は、環境、教育および経験により半年から1年で変化することがあります。行動特性を定期的に診断することで、アップデートされた情報に基づく、様々な活用ができるようになります。
行動特性を利用してできること
前述のとおり、行動特性分析結果の利用は、コンピテンシー理念に基づくものを中心にこれまで進んできました。これは行動特性の活用の一つの方法ではありますが、全部ではありません。行動特性は、本来ハイパフォーマーに限定せず、全ての方を対象として分析と活用が行われるべきものです。
これからの行動特性の活用は、理想とされるモデルにそれ以外の人が合わせようとするのではなく、個人一人ひとりの行動特性に応じた最適な指導、教育およびコミュニケーションを行うためのベースとなるものだと私たちは考えています。
また、行動特性分析の利用は、不適格者を炙り出し、排除することを目的とするものではなく、一人ひとりの行動特性を尊重するものでなければなりません。
行動特性の利用シーンは様々です。
行動特性の診断を受けることで、自分自身を客観的に見られるようになり、社会生活を営む上で特に注意すべき点が明確になります。また診断を定期的に受けることで、現在の自分はどのような特性を持っているのかを理解できるだけでなく、過去の自分から何が変わったのか、それが自分にとって望ましいことなのか、それを踏まえてこれからどのような点に気を付けるべきなのかが見えてきます。
また、チーム全員が行動特性の診断を受け、チームのリーダーが個々のメンバーに対して、各々の行動特性に基づく指導やフォローを行うことができれば、メンバーがそれぞれ能力を発揮できるようになります。結果的にチーム全体のパフォーマンスの向上につなげることができます。
企業における業務の遂行は、その殆どがチームワークを必要とします。個々人の業務遂行能力を最大限活用し、個人としてもチームとしても成長していくためには、各々の行動特性を理解し、それに基づく適切なコミュニケーション行うことが何よりも重要となります。
行動特性診断結果の活用のメリット
行動特性の診断結果の利用の最大のメリットは、チームのコミュニケーションの質(QOC=Quality of Communication)の向上です。良いチームは、質の高いコミュニケーションを行っています。
日本企業の特徴として、新卒の一斉採用、定期人事異動があり、定期的に社員の配置や転勤がなされます。これまでは、業務の内外で頻繁にかつ長時間に渡りコミュニケーションを行い、相互理解に努めてきました。歓迎会、忘年会、新年会、暑気払い、社員旅行、打ち上げ等定期的に全員参加型のコミュニケーションの場を作ったり、日常的には昼食を一緒に食べ、残業後の飲み会に参加したりしてきました。
業務外の情報も収集し、それぞれが自分の経験と勘で、新しいチームメンバーの人となりを理解し、業務を円滑に遂行するためのコミュニケーションの質の向上を模索してきました。
働き方改革によるワークライフバランスの重視や、今年初頭からの新型コロナウイルスの感染拡大による会食自粛等により、昨今では従来の日本式の相互理解のプロセスを続けることは難しくなっています。
このような環境下では、行動特性の診断結果の活用は非常に有用です。行動特性診断を利用すれば、全く面識のないチームメンバーを迎え入れても、診断結果に基づきコミュニケーションを行うことで、そのクオリティが保たれます。これまでその人の人となりを理解するためにかけていた長い時間と労力を省き、最初から質の高いコミュニケーションができるようになるのです。
行動特性分析ツールLISACO®は、行動特性をユニークなメソッドで分析・分類し、解説やアドバイスをするクラウドサービスです。会社等の団体において導入することで、本人の行動特性の診断による自己理解や自己啓発だけでなく、チームリーダーに対して、本人と個々のメンバーの行動特性に基づくコミュニケーションや育成のアドバイスも行います。
チーム内のメンバー間の人間関係が上手く行っていないときには、チームリーダーはリーダーシップを発揮し、関係改善を図らなければなりません。人間関係に摩擦が起こるのは、往々にしてお互いの相手の行動特性に対する理解不足が原因の一つとなっています。LISACO®を利用することで、チームリーダーは、問題となっている二人の行動特性の分析結果に基づき、個別に適切なフォローをすることで、二人の間の相互理解を促進し、関係の改善を図ることができます。
LISACO®の特徴は、客観的な診断結果はもちろん、更に一歩進んで具体的なアクションにまで言及しているところです。先程の例で言えば、人間関係が悪化しているチームメンバーの行動特性を理解したとしても、具体的にどのようなフォローを二人に行えば良いのかが解らなければ解決には至りません。
LISACO®は、二人の行動特性に基づく関係性の分析結果を表示したうえで、この二人に対してそれぞれどのような点に気を付けてフォローすれば良いのかまで表示されます。 これを機会に、行動特性診断・分析を生かしたチーム運営を考えてみませんか。
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