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行動特性は英語でなんという?

「行動特性」は、コンピテンシーとセットで説明されることが多いのですが、Competencyを英和辞典で調べると「コンピテンシー」と訳されます。Competencyが本来持つ意味とは何でしょうか。Competencyと行動特性の違いとは?Competencyという言葉の成り立ちと踏まえて、わかりやすく解説をしていきます。

行動特性は英語で何という?

「行動特性」をGoogle翻訳で調べると「behavioral characteristics」と表示されます。「behavioral」は「行動に関する」という形容詞、「characteristics」は「特徴/特性/特質」という名詞です。「behavioral」は、「behavioral science (行動科学)」や「behavioral analysis (行動分析)」など、動物や人間の行動を研究対象とする「行動学上の」という意味も持ちます。従って、「behavioral characteristics」は「行動学上の特性」という側面を捉えた英訳となります。他の辞書でも「behavioral characteristics」と訳されているものが多く見受けられます。

一方で、行動特性は、コンピテンシー「competitor」とセットで説明されるケースが多いようです。語源である英語の「competency」は、ハイパフォーマー(業務遂行能力が高く、安定して成果を出し続ける人材)の行動特性という限られた意味を持ちます。

行動特性の英語=コンピテンシー(competency)のもつ本来の意味

「competency」は、「competition」やと同様に、動詞「compete」の名詞形です。「competition」はゴルフの競技会やデザイン公募という意味では「コンペ」と訳され、「competitor」は競合他社という意味では「コンぺ」と訳されることがあります。いずれも競い合うという意味を含む単語です。

「compete」は、「com(共に)」+「pete(求める)」で構成されています。本来の意味は獲物を求めて一緒に闘うところにあったようですが、そこから獲物を取り合い、お互いに争うという意味に変化したと考えられています。「compete」はそこから派生して、競争する、匹敵するという意味を持つようになり、そこからCompetencyは競争する能力・資質という意味持つこととなりました。更に、その派生形として(社会での競争に打ち勝てる能力がある)ハイパフォーマーの行動特性という意味が生まれのだと考えられます 

コンピテンシーと行動特性

行動特性は、人間を初めとする動物の行動を科学的な視点から分析し、意味をもつ一定のパターンごとに分類したものと考えることができます。これまでご紹介してきたとおり、行動特性は本来広い意味を持つものであり、多様性に富んでおり、それ自体に良い悪いはありません。

行動特性の分析を、人事評価や人材育成の中に利用しようとしたときに、行動特性の中の特定の一部分に着目し、生まれたのがコンピテンシーという概念です。

企業活動におけるコンピテンシーの活用に強い影響を与えたのが1973年に米国ハーバード大学教授の心理学者デビッドC.マクレランド氏(David C. McClelland)がAmerican Psychologist誌に発表した“A reconsideration of testing for competence rather than for intelligence”という論文です。その中でマクレランド教授は、知能テスト(intelligence test)と適性テスト(aptitude test)では、仕事の業績に限らず、人生の成功(life-outcome)を予測することはできないとして、コンピテンシー(competency)にフォーカスしたテストへの移行を提唱しています。そして、そのコンセプトとして、職業上の成果だけでなく、リーダーシップや人間関係の構築能力等、社会的な能力も含めたコンピテンシーを診断できるテストを挙げています。

この後、このマクレランド理論は、研究者の実際の企業等での実証的検証を経て、組織の人事管理に導入されていきました。

企業は、社内において、職種ごとに業務の遂行能力が高く、安定的に成果を出し続ける人の行動特性を分析してモデル化し、そうでない人材をそのモデルに近づけるように教育することで、個々人のみならず組織全体の生産性を上げることを目指すようになりました。日本でも大企業を中心に多くの企業で人事評価ツールとして導入されています。

しかし、現時点での行動特性の利用はコンピテンシーに比重を置きすぎるきらいがあります。確かに、ある組織のハイパフォーマーの行動特性を抽出してモデル化することは、その組織に属する人材(特に若年層)にとっては目指す目標が明確になり、具体的に努力をしやすくなる効果があります。また、生身の人間であるロールモデルとは違い、そこに人に対する好き嫌いの感情は発生しないため、より効果があるかもしれません。ただ、これは行動特性の活用の一形態でしかありません。

例えば、組織の構成員の各々の行動特性を個性として受け入れ、それに基づき一人ひとりが適切なコミュニケーションをとっていけば、相互理解が深まり、組織の活性化を図ることができます。

行動特性の活用方法とそのメリット

コンピテンシー評価以外の行動特性の利用の最大のメリットは、チームのコミュニケーションの質(QOC=Quality of Communication)の向上です。良いチームは、質の高いコミュニケーションを行っています。

日本企業は伝統的に、従業員間の業務内外の頻繁なコミュニケーションを推奨または許容することにより相互理解を深め、チーム内のコミュニケーションの質を保ってきました。職場でチームの業務状況をいつも見守り、メンバーの小さな異変も見逃さず、時には職場の外で話を聞き、フォローし、必要であれば他のメンバーに対しても(職場内外で)働きかけるといった上長が理想の上司とされた時代ありました。

新卒の一斉採用、定期人事異動がある日本企業においては、定期的に社員の配置や転勤がなされます。これはチームリーダーにとっては、チームに定期的に新しいメンバー(多くは面識もない方々)を受け入れ、マネージメントをしていくことを意味します。場合によっては、チームリーダーが、自身の転勤により、一面識もないチームの運営を任されるというケースも出てきます。

現在では、働き方改革によるワークライフバランスの重視、新型コロナウイルスの感染防止策としての会食の禁止等、伝統的な手法による社員間の相互理解の促進には様々な制約があります。また、新型コロナウイルスの感染防止の観点から広くテレワークが導入されるようになりましたが、テレワークで新入社員等の新任者を受け入れ、チームを運営するという実務は、更に難易度が高くなります。

このような環境下では、行動特性の診断結果の活用は非常に有用です。行動特性診断を利用すれば、チームリーダーは全く面識のないチームメンバーを迎え入れても、診断結果に基づきコミュニケーションを行うことで、そのクオリティが保たれます。これまで伝統的な手法でメンバーの人となりを理解するためにかけていた長い時間と労力を省き、最初から質の高いコミュニケーションができるようになるのです。

行動特性分析ツールLISACO®は、行動特性をユニークなメソッドで分析・分類し、解説やアドバイスをするクラウドサービスです。会社等の団体において導入することで、本人の行動特性の診断による自己理解や自己啓発だけでなく、チームリーダーに対して、本人とメンバー各々の行動特性に基づくコミュニケーションや育成のアドバイスも行います。

テレワークや働き方改革を遂行する企業は、成果型報酬体系に移行をしていくところも多いのではないでしょうか。これからは、ますます目標設定面談や評価面談の重要性がクローズアップされていきます。その際に、客観的なアプローチが不可欠ですが、評価者(上長)と被評価者(部下)双方の納得感も非常に重要です。上長は自身が期待する部下のコミットメントが過不足なく正確に伝わるように部下に対してコミュニケーションをとる必要があります。LISACO®を利用すれば、評価者は、自身と個々の被評価者の行動特性分析に基づき、コミュニケーションをとる際に気をつけるべき点を予め理解したうえで、全ての被評価者に対して質の高いコミュニケーションを実現することができます。

チームリーダーは、チーム内のメンバー間の人間関係に異変が生じた際には、リーダーシップを発揮し、関係改善を図らなければなりません。人間関係に摩擦が起こるのは、往々にしてお互いの相手の行動特性に対する理解不足が原因の一つとなっています。LISACO®を利用することで、チームリーダーは、異変を感じた二人の行動特性の分析結果に基づき、個別に適切なフォローすることで、二人の間の相互理解を促進し、関係の改善を図ることができます。

LISACO4®の特徴は、客観的な診断結果はもちろん、更に一歩進んで具体的なアクションにまで言及しているところです。先程の例で言えば、人間関係に異変が生じたチームメンバーの行動特性を理解したとしても、具体的にどのようなフォローを二人に対して行えば良いのかが解らなければ解決には至りません。LISACO®は、二人の行動特性に基づく関係性の分析結果を表示したうえで、この二人に対してそれぞれどのような点に気を付けてフォローすれば良いのかまで表示されます。これを機会に、チーム運営に行動特性診断・分析を活用してみませんか。

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